May 17, 2011
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1日から1カ月にわたる「ラマダン(断食月)」が始まった。イスラム教徒が国民全体の約6割を占めるマレーシアでは、1カ月後に迎える「ハリラヤ・プアサ(断食明け大祭)」の休暇に向けて重要な時期となる。日の出から日没までの間、飲食や喫煙が許されないラマダンを直近に控えた7月には、毎年のように政府から厳しい規制についての発表があり、期間中にはその規制に沿った取り締まりが行われる。これらはイスラム教徒以外の国民にとってもまったく無関係ではなく、共有して認識しておくべき事柄が多い。
◆政府の規制に反発
一騒動あったのが、マレーシア北部ケダ州首相による州内におけるラマダン期間中の娯楽施設、カラオケ店やラウンジ、ライブ演奏のあるバーやホテル、飲食店の営業禁止措置についての通達だ。州内の対象店はおよそ300軒。実施されれば、期間中1カ月の損失は1店舗当たり5万リンギット(約130万円)、総額1500万リンギットにおよぶ。その影響で店舗の賃貸料や従業員の給料が支払えず、店をたたまなければならないケースも出てくる。
同州は、野党の全マレーシア・イスラム党(PAS)が政権を握っている。イスラム教徒のみならず全住民を巻き込んだ措置が発端となり、特に中国系マレーシア人から政権への反発や批判の声が高まった。
中国料理レストランや外国人観光客の利用が多い飲食店、ファストフード店は例外として通常の営業が許可される見通しが示されたものの、イスラム教徒以外への施設利用の自由を妨害しているとして、与党マレーシア華人協会からも強い抗議があった。
これを受けてケダ州政府は一転して方針を変更、イスラム教徒に限った禁止措置とし、事態は落ち着きをみせている。
イスラム国でありながらも多民族が共存し、政権も比較的安定しているマレーシアだが、公正選挙を求めて7月9日に行われた大規模な街頭デモが、外国メディアでも大きく取り上げられたことで、国のイメージを大きく傷つけた。これによって国民をはじめ、与野党ともに国内のさまざまな摩擦に対して敏感になっていることは確かだ。
ケダ州はもともと、北部のペルリス州、クランタン州、東部のトレンガヌ州、南部のジョホール州と並び、伝統的にイスラム色が強い地域柄でもある。また、これらの州では、公的機関や学校は金曜日がイスラムの祝日となるため、土曜日から水曜日までが一般にいう平日にあたり、就業日や登校日もそれに準じている。首都クアラルンプールなど都市部を“標準”としてしまいがちだが、地域により事情が異なることも多々あることを再認識することで、問題の発端が見えてくることもある。
◆客商売は争奪戦
ラマダンは宗教的な意味合いが大きい行事ではあるが、日が沈んで一日の断食が明ける「ブカ・プアサ」は、イスラム教徒以外の人々にとっても、この時期にしかない楽しみのひとつとなっている。通りに並ぶ「ラマダン・バザール」の屋台の数々では、マレー風炊き込みご飯や焼き鳥、焼き魚、マレー菓子など種類が豊富で色とりどりの食べ物が売られる。日中を断食で過ごしたイスラム教徒たちが、通常より早めの就業時間を終え、日没とともに食事をするために買い求めて家路を急ぐ。
またホテルやレストランでは数十種類もの豪華料理を用意した「ラマダン・ビュッフェ」を開催する。毎晩のように家族や友人たちが大勢で夜中までにぎやかに食事をしながら、ラマダンを過ごすマレー人も多い。
ラマダン・バザールの屋台の店主は、年間で一番の稼ぎどきとなるこの時期に地方からクアラルンプールに出稼ぎにやってきて、売上金をラマダン明けのハリラヤ・プアサを迎える準備資金に充て、大家族全員で盛大に祝うケースも少なくない。ホテルやレストランも多忙な時期で、他店と競ってメニューに工夫を凝らしたり、早期予約の割引特典をつけたりと激しい顧客争奪戦が繰り広げられる。
夏休みを利用して日本から訪れる旅行者も多くなる8月だが、今年はこのラマダン期間と重なり、日中は通常に比べて人通りも少なく、店舗が閉まって飲食店街が閑散としている印象を持つかもしれない。また8月下旬から9月初旬にかけては、ハリラヤ・プアサの休暇を実家あるいはリゾート地で過ごそうというマレー人たちで空の便、長距離バス、ホテル予約はすでに満杯ということもあるので注意が必要だ。(在マレーシアジャーナリスト 大野素子)
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